機械学習による慢性疾患の生涯リスク予測 ~2型糖尿病の30年間を再現する新技術「SReFT-ML」
2025年11月20日
研究?産学連携
■研究の概要
中国福彩app官方下载大学院薬学研究院の佐藤洋美准教授、樋坂章博教授(研究当時)らの研究グループは、臨床試験の観察期間を超える長期進行の慢性疾患を解析する方法として、機械学習による新しい手法(Statistical Restoration of Fragmented Time course - Machine Learning: SReFT注1)-ML)を開発し、これを糖尿病の解析に適用しました。これにより、今まで数百人単位でしか実施できなかった解析を、1万人以上の患者、かつ30種近くの検査値の解析へと拡張することに成功し、生涯にわたる腎機能の悪化や合併症のリスクが適切に予測されました。本研究成果は、今後様々な疾患の治療法開発や臨床予測モデルへの応用が期待されます。
本研究成果は米国臨床薬理学会の公式ジャーナルClinical and Translational Science(CTS)に2025年10月23日に公開され、同時に米国研究製薬工業協会(PhRMA)財団とCTSの属する米国臨床薬理学会(ASCPT)が共同実施したコンテストにて2025 PhRMA Foundation Trainee Challenge Award が授与されました。これは、臨床?トランスレーショナル科学における将来のリーダーとして認知されるべき若手研究者を表彰する賞参考資料1)で、特に2025年には「AI/機械学習」がテーマの論文から、論文の質?インパクト?新規性?テーマの時宜性が厳しく審査され、本論文を含む6論文の第一著者が受賞しました。
■用語解説
注1)SReFT:疾患進行の共通軸を見出し、非線形混合効果モデルを用いて疾患時間とバイオマーカーや症状の変化を再配列?解析する手法。技術的には、SReFTは個人ごとのばらつきやパターンを含めて、データ全体の傾向を数学的にモデル化する方法「非線形混合効果モデル」を扱うのに対し、SReFT-MLは「機械学習」を用いるため計算効率に優れている。つまりSReFT-MLはより高速で、大規模な解析にも対応可能である。そのため、多数の患者やバイオマーカーを対象としたデータや、日常の医療現場で得られたデータ「リアルワールドデータ」の解析に適している。
■論文情報
タイトル:Development of a Novel Machine Learning Method for Estimation of Life-Long Chronic Disease Progression and Its Application to Type 2 Diabetes
著者:Yamato Sano, Ryota Jin, Hideki Yoshioka, Yuki Nakazato, Hiromi Sato, Akihiro Hisaka
雑誌名:Clinical and Translational Science
DOI:10.1111/cts.70351.
■参考資料1
タイトル:AI/ML in Translation: PhRMA Foundation Trainee Challenge Award
雑誌:Clinical and Translational Science
DOI:10.1111/cts.70380.
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図1:SReFTおよびSReFT-MLの概略図
SReFTとSReFT-MLは、どちらも病気の長期的な進行を予測?理解するための方法。SReFT では技術として複雑な統計モデルを使うが、SReFT-MLでは「機械学習」を用いるため計算効率に優れ、大規模データの解析により適している。